一般に漢方は慢性疾患にゆっくりと効果を示すような印象があると思いますが、かぜ症候群、特にインフルエンザに対しては速やかに効果を現すことが多いと報告されています。

漢方は宿主(患者)の免疫機能を調整することで対応します。

たとえば新型インフルエンザのような感染症が流行すれば、誰の体の中にもウイルスが入り込んでくるはずですが、そこで発症する人としない人が出てきます。これはいわゆる初期免疫の差と考えます。

基礎疾患のない人がインフルエンザになった場合、麻黄湯を投与されることが多いようです。

麻黄湯は強い頭痛や全身の筋肉関節痛がある場合に適しております。
インフルエンザのように高熱や関節痛など症状が激烈なときは、通常麻黄湯を飲んで不快な思いをする患者さんも1~2日は問題なく飲めるためです。お湯に溶かして飲むといいです。動悸などに気を配る必要はありますが、動悸が強い時は量を減らすか、一番体に優しい麻黄剤である麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)にします。
症状が落ち着いた後ならば、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)でもよいでしょう。こちらには麻黄は含まれていません。

ただし時に重篤化するインフルエンザというウイルス感染症に対して、エビデンスが少ない漢方薬で大丈夫かという疑問も浮かぶのは当然です。

kubo T, Nihimura H : Antipyretic effect of Mao-to, a Japanese herbal medecine, for treatment of type A influenza infection in children. Phytomedicine 14 : 96-101, 2007

Nabeshima S et al : A coparison of oseltamivir with maoto, a tranditional herbal medicine, for the treatment of adult seasonal influenza A. J Trad Med 27 : 148-156,2010

上記の文献によれば、麻黄湯は単独で、タミフル・リレンザに匹敵する臨床効果を有するとしております。

麻黄湯も初日の治療が大切で、たとえ治療開始が午後でも初日は3回飲むこと。さらに初回投与を倍量(2包)にすると全身症状が緩和されることが示されております。
もしくは4時間毎に服用してもいいと思います(初日、1日量が倍量になります)。2日目以降は症状をみて飲む量を決めます。

麻黄湯は体を温める作用があり、服用後は発汗します。逆に脱水を来す場合がありますので水分摂取は大切です。

抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害剤)との併用も有効と考えられますが、小児の臨床試験では麻黄湯単独群とタミフル併用群とでは発熱持続時間に差はなかったようです。

■麻黄湯のまとめ

①成人インフルエンザに対して、麻黄湯は単独で抗インフルエンザ薬と遜色のない効果を発揮する。
②抗インフルエンザ薬と併用してよい。
③発症48時間以内の投与が望ましい。
④治療初日は投与開始が午後でも3回/日投与する。5日間投与が望ましい。また初回投与のみ2包/回すると全身症状緩和に効果がある。
⑤脱水を避けるため、初期は水分を多く摂取する。
⑥高熱時はアセトアミノフェンを頓服してよい。
⑦妊婦、高齢、心疾患、呼吸器疾患に関してはエビデンスがないので投与は避ける。

インフルエンザ診療のポイント(南江堂:藤田次郎氏編集)より

個人差があります。
インフルエンザ治療は、担当の先生によくご相談ください。